2020年07月05日

藤井聡太という宝


驚くべき才能が出現したものだ。超難解な問題で知られる詰将棋大会を小学生の時から5連覇、14歳でプロ入りするやいきなり29連勝、その後も3年連続勝率8割超え、そしてついに2つのタイトル戦に登場と、まるで漫画の主人公のような活躍ぶりだ。
こう言っても、プロの将棋界を知らない人には今ひとつピンとこないかもしれない。棋士の集まりである日本将棋連盟は、小さい頃から神童と言われた人たちが血の滲むような切磋琢磨の末にプロの資格を得た天才集団である。将棋を習い始めてすぐ周りに勝てる大人がいなくなり、小学高学年で県代表クラス、というような逸話がザラにある。そんな手ごわい連中を相手に29連勝とか勝率8割というのは本来あり得ない話なのだ。

いや、前例が一人だけいる。羽生善治である。彼もまた中学生でプロになり、破竹の勢いでタイトルを奪取して今に至る。その数99。この数字は空前絶後で、二度と破られることはない金字塔と言われている。しかし、藤井聡太ならひょっとすると・・・と思わせるほど、彼の才能は抜きん出ている。

将棋界では、今やAIが人間の能力を遥かに凌駕し、名人でも歯が立たないほど進化を続けている。藤井聡太の凄みは、そのAIに判断を誤らせる点にある。私もリアルタイムで何度か見ているが、AIが次善と判断した手や、そもそも予想にすら上がらない手をときどき彼は指す。それをAIが慌てて解析し直すと最善手だった、というケースがいくつもあるのだ。
先日も、彼の指し手が、AIが5億手読んでも候補に上らず、6億手を読んでようやく出てきた最善手だったということがあった。いったい彼の脳内で何が起きているのか、それを知る人間はこの世に一人もいない。


注目すべきは、羽生も藤井もごく普通のサラリーマン家庭に生まれている点だ。政治家のような二世棋士という例はほとんどない。現役棋士を見回しても、親子棋士というのは皆無のはずだ。つまり、将棋の天才はある日突然、将棋に何の関係もない市井の家庭に誕生するのである。
ただ、両者に共通するのは中間クラスの家庭であることだ。つまり、知性や文化が花開くためには、分厚い中間層が不可欠と言えるようだ。ところが、今の日本からはこの中間層がどんどん消滅しつつあるという。大丈夫か、日本。

将棋愛好家の端くれとして、藤井聡太という宝と同時代に生きていることはこの上もない幸せである。願わくは、これからも彼の身に何事もなく、変なオンナに引っかかることなく、AIを凌ぐ棋士になってもらいたい。彼ならできる、そう思っている。


posted by ギャンブラー at 19:07| Comment(0) | 唯一の趣味 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする