2007年06月22日

バーの効用

人間というのは、自分が一番辛い思いをしているのだと思う生き物らしい。今日も会社でそんな輩につかまり、延々2時間も話を聞くハメになった。何といっても私は管理職であり、そうした申し出に真摯に向き合うことを強要される。何の因果か知らないが、うんざりすることではある。

そんなわけで、バーのカウンターに座ってドライシェリーを注文したのは、9時を回っていた。ため息をつきつつ、その日最初の一杯を喉にすべらすと、憂鬱な色に染まっていた心が、若干ほぐれて落ち着きを取り戻すことがわかる。薄暗い照明とコルトレーンのテナーサックス、目の前に並ぶ酒瓶のきらめきが心地よい。バーという空間を知っていてよかったと思う瞬間だ。

カウンターに座る客層を見ていると、実に多様である。マスコミ業界人らしいフリの客、中年サラリーマンと若いOLのカップル、希少なモルトウイスキーが目当てのコアな常連‥‥。
私の隣に座ったのは、明らかに還暦を過ぎたと思われる女性と私と同年輩の女性の2人連れだった。ジントニックを頼む間もなく、生ハムやらドライトマトやらチーズやらをどんどんオーダーする。この店は銀座の本格バーの中では格安の部類に属するのだが、さすがにそんなに頼むと結構なお値段になる。大丈夫かな、というこちらの心配を見越したように、年配の女性が陽気な声で私に話しかけた。

「わたしね、毎日仕事をしているからお金を使う暇がないの。だから週に1回、ここに来て思いっきり散財するのよ」

こういう元気な年配の女性は見ていて心地よい。やはり人間、いくつになっても仕事を持つことが大切なのだと思い知らされる。ただ、この手の女性と昵懇になるとなかなか放免してもらえないことがわかっているので、頃合いを見計らってお勘定にしてもらった。本当は、「乾燥イチジクもおいしいですよね」などと話しかけたかったのだが‥‥。

バーを出て地下鉄の駅に向かう私の心は、幾分軽くなっている。今夜は熟睡できそうだ。
posted by ギャンブラー at 23:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 暗くて心地よい場所 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
仕事帰りにバーですか?
よかですなーw
っつか、都会住まいでないとこれもまた味わえない…
あたしは常時車なんで
決して味わう事ができず
憧れですw

2時間延々と…ですか?
その方も凄い情熱ですね
(2時間も話し続ける事はなかなか容易ではないですからねw)
まぁ、、、それもこれもギャンブラーさんの人徳って事で…

Posted by いなおやじ at 2007年06月23日 22:35
いなおやじさん。今はボーナスの時期なので、査定やら何やら、面倒くさい仕事があるわけでして。人が人を評価するわけですから、すべての人が満足するはずもありません。誰かが不満や愚痴を聞いてあげないと収まりがつきません。その役割が私、というわけです。

ドアを開けると非日常の世界が広がっているバーというのは、なかなかいいものです。まったく知らない人と行きずりに話ができるのも、楽しみのひとつです。
いつになるかわかりませんが、一度ゆっくりバーで肩を並べてグラスを傾けたいものですね。
Posted by ギャンブラー at 2007年06月23日 22:49
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